第1話 ろくでなしからのメッセージ

リッキーが初めて、私の所属するファーストバプテスト教会に来た日の事は、今もはっきり記憶に残っている。

教会に参加したてのころ、私は子どもたちのクラスを手伝っていたが、そのうちに牧師先生の妻、イヴォンヌが指導するJ A M Sクラスに参加するようになった。

J A M Sには12人くらいが所属し、6人から8人が定期的に参加していた。

ある日、イヴォンヌはJ A M Sクラスに新しい人が来る事を告げた。告げたと言うよりも、質問を投げかけた。

刑務所から出たばかりの保護観察付きの人、リッキーが私たちのクラスに参加してもいいかと。

イヴォンヌの説明によるとリッキーは強姦傷害罪で18年間、刑務所に入っていたが、仮釈放された。今回は本当に改心したくて、教会を訪れたという事だった。

イエス様がリッキーを受け入れない事はあり得ない。私達が少しでもリッキーの助けになるならと全員一致でリッキーを迎え入る事に賛同した。

正面玄関から入ってすぐ右側の小さな図書室が私達のクラスルームだった。さすがに皆の緊張し、いつもとは違う空気が漂っていた。

固唾を飲んで見守る中、入り口とは反対の礼拝堂側のドアからリッキーがイヴォンヌに付き添われて入ってきた。「ハーイ」とあちこちから声がかかる。

正直、私は拍子抜けしてしまった。強姦、傷害ってのが頭にこびりついていたのか、怖そうなイカツイ男性を想像していたのに、何とも穏やかな、アメリカ人男性の中ではむしろ華奢なイメージだった。

イヴォンヌは簡単に名前だけを紹介して、続いてリッキーが自己紹介した。

リッキーは何のためらいもなく、自分は強姦障害を繰り返し刑務所を出たり入ったりして来たが今回は本当に悔い改めて、イエス様に従って新しい人生を送りたいと話した。

短いけれど、端的で強烈な証に自然と拍手が起こった。

リッキーだけじゃなく、私たちも皆罪人で、そんな私たちのためにイエス様が十字架にかかってくださったことに感謝し助け合って前向きに生きて行こうって確認しあった。

ある日、リッキーから魚釣りに行かないかと誘われたけれど、子連れで留学していた自分は勉強と子育てで精一杯で時間に余裕がなくて残念ながら魚釣りには行けないと断った。

でもそれは表向きの繕いで内心はやはり深く関わるべきではないと言う警戒が働いていたと思う。

子連れ留学という言葉に興味をひかれたのかリッキーが色々と聴き始めた。リッキーは、たくさんの移民がそうであるように、私も子連れで東南アジアのどこかからアメリカに逃げて来たのだと思っていたらしい。

最初に自己紹介した時、日本人だと言ったはずなんだけど通じてなかったようで、情けなかった。アメリカに来て、3年も経っているのに、まだまだ英語がうまく話せなくて、相手に分かってもらえていなかったということが多々起こった。

自分では、一生懸命話していて、通じていると思っているのだが、実は通じていなくて、時々は聞き返してくれるけれど多くは、わかったふりをしている。

2002年8月に子連れで留学したというのは記載事項のある事実だ。そしてリッキーが私の英語を理解するのに困っているのを見て、

「あーあ、3年経っても私の英語はこの程度なんだ。石の上にも3年って言うけれど、私は全くもってロクでもないなあ」

と嘆いた記憶はしっかりしているのでリッキーが教会にやって来たのは2005年だ。

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