第1話 小さな習慣が人生を変える?

佐々木 正悟

著者:佐々木 正悟

最近「小さな習慣」がちょっとしたブームを迎えています。個人的に、これは大変に素晴らしいことだと思います。私は、もしも人生を豊かにしたいとか、これまでの生き方を改めたいと思ったら、「小さな行動を習慣化」する以上に良い方法はないと、ずっと信じてきたからです。

小さな習慣がそんなに大事かと尋ねられるなら、非常に大事だと答えます。実例として、すでに出回ってる書籍の中で紹介されてきた「小さな習慣化による大きな成果」の実例を、まず少し覗いてみることにしましょう。

・毎日二分間、「理想の夫はどんな人?」と自問することからはじめたら、半年以内に理想の結婚相手が見つかった(『脳が教える!1つの習慣』)

この例は、これだけでは少し、納得がいかないでしょう。信用できないかもしれません。

ただこの事例だけでも、しっかり検討する価値はあります。「毎日」2分間です。これは一見「小さな」習慣かもしれません。しかし、実際毎日欠かさずやろうと思ったら、それほど簡単なことではありません。

私がこの連載で述べたいことの1つに、「小さな習慣」は小さいかもしれないが、簡単とは限らないという点があります。このことがあまりしっかり述べられておらず、むしろ逆の点が強調されて過ぎていると思っています。

とは言えいまはまだその点について今は深入りせず、他にも小さな習慣の驚くべき効果の事例があります。見ていきましょう。

・腕立て伏せを1回だけやるようにしたら、毎日30分の筋トレにつながった(『小さな習慣』)

こちらの事例は、受け入れやすいでしょう。少なくとも理想の夫について自問した結果、理想の結婚ができたというよりは、受け入れやすいと思います。

その理由は、腕立て伏せ1回することは自分でできることですし、30分の筋トレも、やろうと思えば自分だけでやれるからです。

結婚は、自分だけではできません。それには「出会い」が必要で、そのことで多くの人がかなりの苦労をしているのです。

とは言え「腕立て伏せ1回」の実例も、「小さな習慣」であることに違いはありません。(この例はまさに『小さな習慣』(ダイヤモンド社)という書籍から引用したものです)。そして、やはりこれもやればわかるのですが、一見「ばかばかしいほど簡単なこと」であっても、毎日欠かさずやるとなると、そこまで簡単とは言えないのです。

腕立て伏せは(たとえ1回きりでも)きちんとやるとなると負担があります。ふだんまったく運動していない人には、そこそこ負担がかかるものです。まして「毎日欠かさず」です。雨の日も風の日も、というのは屋内でやる分には問題ないとして、インフルエンザにかかった日も、腕を骨折した日も・・・と考えてみると、「失敗することなどあり得ないくらい簡単で小さな習慣」という言葉は、実はちょっとトリッキーなことがわかるでしょう。どんなに簡単そうな習慣であっても、挫折や失敗は、あり得るのです。

だから馬鹿にせず、小さな習慣を本気で身につけていくことが必要です。そうすれば一回の腕立て伏せから30分の筋トレにつなげるということも可能になるのです。

もう1つだけ、事例を挙げましょう。

年間一千万PVを誇る「プロブロガー」の立花岳志さんは、「好きなことをブログに書く」という方針の下「プロのブロガー」となって、六本木と鎌倉に居を構えるまでになっています。

著書『「好き」と「ネット」を接続すると、あなたに「お金」が振ってくる』(サンマーク出版)によると、文章のレベルも、文章量のこともまったく考えなくていいから、とにかく好きなことをブログにアップするという習慣を身につけるのが、何より大事だと説かれています。「質より量より更新頻度」というのが立花さんの金言なのです。

文章が下手で良いから、長くなくて良いから、とにかくブログにアップするというのも、一見非常に「容易な習慣」のように見えます。そんな簡単なことを習慣化すれば、都心と首都圏に二軒も家を建てられるまでになるのかと疑いたくなりますが、立花さんはそうしてきたというのです。

成果があまりに大きすぎるという点はちょっと脇に置いてみて、やはり考えていただきたいのは、本当に「質より量より更新頻度」という習慣は、簡単に身につくものかどうかという点です。

私はブログを長くやっているからよくわかりますが、これは簡単ではありません。いくら好きでも、あまりにつまらないことをネット上に公開するというのは、想像以上にはばかられることですし、また、誰も何の反応もしてくれないブログを100日も続けているうちに、ぜんぜんブログなど書きたくない日が必ずやってくるものです。

立花さんがブログを書いてきたのは100日やそこらではありません。2008年暮れからずっと書き続けていて、もう10年にもなるのです。しかも1日1記事ではありません。日に数本、連日アップしているのです。うんと少なめに見積もっても1000日を超え、総記事数5000記事以上です。まさに「質より量より更新頻度」なのです。

以上のような小さな習慣の効果を覗いてみれば、誰しも「小さな習慣」を身につけたいと思うことでしょう。しかし、大きすぎる成果や、そこに至る長い年月のことを思うと、「なんだか結局自分には無理そうだなあ」と心配にもなると思います。これは私自身が感じることでもあります。

しかし私は、結局「小さな習慣」しかないと思っています。小さくて、容易にできそうで、しかも効果の上がる行動の習慣化が必要なのです。

なぜなら人生を変えるということは、習慣を変えるということに他ならないからです。人によっては、人生の4割が習慣だとか、生活の8割が習慣だとかいいますが、私は自分の行動を数年にわたって記録し続けているからわかっています。

行動の4割や8割どころではなく、実に9割が習慣です。90%もすっかり身についてしまっている習慣を、急に大きく変えるなんて、とうていできるはずがありません。

「自分」をまるごと変えようとしてはいけないのです。

現在の自分の状況になにがしかの強い不満があるなら、「効果的で小さな習慣」を付け加えるところからはじめるのが最も現実的に有効な手段なのです。

これが私のまず言いたいことです。小さい行動から始めれば良いのです。

ただし「効果的」であることが必要です。なぜなら効果が実感できない行動は続けられないから。効果の上がる行動を、習慣として自分自身に「付け加える」こと。

やがて「効果的で小さな習慣」が秘かに潜り込んだウィルスのように「人生に効いてくる」ようになります。そうなることによって、気がつけば自分の人生そのものが改善されている。

そうした流れを作りだすことです。

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ABOUTこの記事の著者

佐々木 正悟

心理学ジャーナリスト。「ハック」ブームの仕掛け人の一人。 1973年北海道旭川市生まれ。97年獨協大学卒業後、ドコモサービスで働く。2001年アヴィラ大学心理学科に留学。2005年に帰国。 帰国後は「効率化」と「心理学」を掛け合わせた「ライフハック心理学」を探求。執筆や講演を行う。 著書に、ベストセラーとなったハックシリーズ『スピードハックス』『チームハックス』(日本実業出版社)のほかに『先送りせずにすぐやる人に変わる方法』(中経出版)『一瞬で「やる気」がでる脳のつくり方』(ソーテック)など。